住めば話せるようになるという幻想

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英語圏に住めば、自然と話せるようになると思っている方は多いのではないでしょうか?
しかし残念ながら、大人は住むだけで話せるようにはほとんどなりません。
留学しても90%以上の人は英語が話せないで帰国するというデータもあるそうです。

では海外生活で英語が話せるようになった人と、ならなかった人の違いはなんなのでしょう。

大人が言語習得するには相当な努力が必要だということを、ほとんどの人がなんとなくは感じているけど、本質的には理解されていないように思います。

毎日英語を聞いていればそのうち話せるようになるというのは幻想です。それがあり得るのはこども時代だけです。特に言葉の臨界期と言われる8歳頃までは、リスニングだけで言葉を覚えていけるとても貴重な時期なので、英語が飛び交う生活の中で、自然と話せるようになっていけます。

しかし大人は残念ながらそういったことはほぼあり得ません。言葉の臨界期をとっくに過ぎた成人が、第二言語を習得するには、文法を学び単語を覚え、スラングやイディオム(慣用句)表現も含め、あらゆる角度からフレーズを学び、そのあとはひたすらアウトプットの練習をしていくしかありません。根気と気合いでとにかく努力をして獲得するしかないのです。これを言うと諦めてしまう人が多くなりそうですが、英語講師としてはここはあえて正直に伝えさせていただきます。

英語を週に数時間勉強しただけで流暢に話せるようになるというのはほとんど無理です。
これは海外にいても同じことが言えます。どんなに長く住んでいても、全くインプットとして学ぶ時期を持たず、ただ聞いているだけではほとんどの言葉が水のように流れていきます。
知らない言葉を無視できるのも、大人の脳の特徴なのです。

最近は英語圏の国のほとんどに多くの日本人が住んでいますので、街によっては日系の各種お店、 学校、病院なども多く存在し、情報もネットから得られるので、ほぼ日本語だけで生活することができるようになってきました。これは言葉の問題があっても生活しやすくなったということで、いいことではあると思うのですが、その反面、英語の習得は難しくなってきているとも言えます。

ではどうすれば言葉は流れていかないか。それは一つでも多くの単語・表現を知っていくことです。それはそうだろうと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、本当にそれがポイントなのです。

脳は知っている(意味が分かる)言葉に反応します。だから知らない言葉はほとんどスルーしてしまいます。海外で日本語が聞こえてきたらすぐ反応しますよね。意味が分かるから敏感に反応できるのです。分からない言葉はほぼ雑音なので、それには反応せず、どんどん流れていくだけです。

言葉の引き寄せは確実に存在します。
これは実体験からも断言できます。
例えば朝単語練習をして、ある言葉を覚えたとします。するとその日やたらその言葉が耳に入ってくるという経験をされた方は多いのではないでしょうか?
知ったことによって、耳(脳)がその言葉に敏感に反応し始めるのです。
意味が分かるから素早くキャッチでき、言葉が言葉をどんどん引き寄せていくのです。覚えれば覚えるほどキャッチできる言葉が増えるので、リスニング力は飛躍的にアップしていきます。

なのでやはり知っている単語やフレーズを増やさない限り、聞いていてもほとんどリスニング力は上がりません。

実際生活の中で英語をたくさん聞いていると、だんだん分かるようになってきたと感じることがあると思いますが、それはシチュエーションから想像できるようになったり、英語の音に慣れて、もともと知っていた単語が聞き取りやすくなったということがほとんどです。そういった意味ではただ聞いているだけでも多少効果はあります。

あとは文法が分かると、英語の語順パターンから意味を想像できるので、多少聞き取れない言葉があっても、大まかな内容は分かることがよくあります。きちんとword orderを身につけることも大変効果的です。

十分なインプット(学び)の時間を取って、ある程度英文法や単語を身につけないと、ただ英語圏で生活しているだけでは、なかなか英語は上達しないのです。

インプットとアウトプットの繰り返しで、少しずつ英会話力はアップしていきますので、それは日本にいても海外にいても同じであるということをぜひ忘れないでください。